ヘムン出版社

8090の思い出[推理編] - パンダ名探偵シリーズ3 /探偵ゲーム[ヘムン出版社編①]

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2015. 10. 8. 12:24

この頃推理小説が懐かしくなってふと思い出したパンダ推理傑作詩リーズを検索している途中、おもしろい投稿を見た。

内容はヘムン出版社のすっきりしている編集とイラストで人気があったパンダ推理傑作選が無断複製海賊版であったという事実

http://orientals.web.fc2.com/pennyway2.html

私も ミステリー作品が好きで、その好みは幼い時から生じたようだ。 記憶をたどってみると 家に推理小説全集があったことを思い出した。。 考えてみれば子どもの頃には、 子ども用推理小説が唯一多かったようだ。80年〜90年代に児童用書籍コーナーにいつも見えていた推理小説全集。その理由は何か。


ヘムン出版社は私の記憶にも、いや80〜90年代に幼年期を送った人であれば書店で誰でも一度は見たものである。またミステリーが好きな子だったらヘムン出版社から出てきた良質の推理関連書籍を知らないことはないだろう。 盛んに好奇心の多い少年たちに探偵物語とミステリー、オカルトのような作品は、文房具の組み立て式(=プラモデルの当時の呼称)と一緒に欠かすことのできない遊びの種であった。 その中の一つであったパンダ名探偵シリーズ。


ところが、その分の多少衝撃的な投稿を見て好奇心が生じた。他のパンダ名探偵シリーズも、日本の本の海賊版ではないだろうか..?という考えで調査をしてみて... 今投稿する内容がその報告書である。





いざ探して見たら、今持っているパンダ名探偵シリーズは一冊もなかったし、思い出すのもシリーズの中の一つである名探偵シリーズ7巻「ホームズの世界一周?」の表紙だけを思い出すだけで内容は全く思い出さなかった。

検索をしてみても、国内のウェブページには、「探偵ゲーム」についての情報はほとんどなかったし、某ブログで書かれていた紹介文と表紙だけ。

 

探偵ゲーム

     読者への挑戦状
 

悪の天才が読者に挑戦状を出した。それも奇抜でぞっとする犯罪で、この本は読者の皆様が名探偵になって各種犯罪にぶつかり合って解いていく、読者らと本との火花散る推理ゲームです。

「悪の天才」(翻訳の単語の組み合わせである。悪の天才だなんて)を手がかりで試行錯誤の末に原作を見つけることができた。



 

ヘムン出版社の探偵ゲームは藤原宰太郎が書いた「探偵ゲーム 怪盗Xより七つの挑戦状」の無断複製海賊版だった。そうだ。 最初に言及されたブロガーの記事で言及されたパンダ名探偵シリーズ「世界の名探偵44人」「世界の偉人は名探偵」の原作者であるその人である。藤原宰太郎。

 

探偵ゲ   Xより七つの挑 戦状

探偵ゲーム

|   読者への挑戦状   

   
著者 藤原宰太 キム・ソンファン
出版社

KKベストセラ ズ ワニの本

ヘムン出版社
初版発行 1968年3月1日 1986年


先に藤原宰太郎について調べてみる必要がある。 よく知らされた簡単な状況が与えられてトリックを解く推理ゲーム、国内書店を検索すれば簡単に探すことができる各種児童用、成人用ㅇㅇ推理クイズの類の元祖格である人だからだ。


 


簡単に紹介すると推理小説作家で、1960年から2000年代初頭まで、児童、成人用問わずトリッククイズ関連書籍を着実に書いた人物である。 短い文章や絵の状況が与えられて、与えられたヒントから推理して問題を解くいわゆる推理クイズ関連の本をたくさん書いてヒットさせた。 60年以降、日本では藤原の「探偵ゲーム」が人気を集めて多く売れ、色々な作家の推理クイズ形式の本があふれ出始めたという。


以下は、国内で出版された、国内推理クイズ関連本中の一部である。

推理評論家チョン・テウォンの推理クイズ/チョン・テウォン 文/  (C) 文化広場出版 1992  ( 左) 

創意王になる推理想像クイズ 100 / キム・チュンウォン 文 /  (C)  ジンソン子ども出版 2012 (右)




国内で発行された彼の推理クイズ関連本が少なくないのに、意外になじみがうすい名前である理由はみな海賊版が発売されたためだ。 おそらくその始まりは(上記のペニーウェイ様のブログでも紹介された)ヘムン出版社の「世界の名探偵50人」であるようだ。


探偵ゲーム は、彼の著書の中でも初めの本であり、90年代半ばまで版を重ねて撮影されたベストセラーだ。様々な版本が存在するその中に89年度に文庫化された版を91年度に礼文堂が複製した海賊版がある。  礼文堂版(楽しい探偵ゲーム) をみると、直訳だらけに粗野な印刷状態と成人用の図描写がそのまま入ったことを見ると、原作を改めずにそのまま出版したものと思われる。(そうしてみてこそ海賊版だが...)


探偵ゲーム 海賊版(礼文堂)


探偵ゲーム /  藤原宰太郎 /  イラスト: 村松真澄 /  ( C) KKベストセラーズ ワニ文庫 / 1989



そしてヘムン版をそのまま持ってきたユジン出版社の「名探偵ゲーム百科」がある。これも2000年初めにカバーのみ出版された。

一つはっきりしているのは  ユジン出版社 ヘムン出版社 というもの。ヘムン出版社のパンダ推理傑作シリーズの背面にユジン出版社の名探偵ワールドシリーズの広告があり、逆にユジン出版社の本の裏の広告ページでヘムン出版社の推理シリーズの広告をしている。お互いを広告を出しているという話。そして著者を見れば分かるが  ヘムン出版社の本にいつも登場するキム・ソクファンさんがユジンにも同じ本を書いている。  


 


名探偵ゲーム百科(ユジン) 挑戦!名探偵クイズ対決(ユジン)

ヘムンの原本資料を求めるのが難しくて、上のような理由でこの投稿では、原本と複製版比較にそれぞれ礼文堂版とユジン版を使った。 (何枚かは例外)


事実宰太郎が初めて書いた本はイラストの雰囲気や素材を見れば絶対児童用書籍ではないが、ヘムン出版社の配慮(?)で子ども用に変貌したし、ユジン出版社(=ヘムン出版社)版になると完全に児童用に変化した。


絵の違いを見てみよう。いくつかの問題で登場する裸の女性の絵は、児童用に置き換えられた。事件の状況描写自体も浄化された。

原作 盗作




下の絵は唯一探した文庫版ではない1968年版宰太郎の探偵ゲームの絵だ。下のユジン版と絵を比較してみれば、でたらめに切り貼りしてイラストを描いている。

 




ヘムン版の画像がどんなものか知ることができないが、それ以降に出てきたユジン版(=ヘムン出版)の絵を見ると、元の画像と比較して、状況描写を大まかに 描いている。簡単に言えばディテールが落ちる。 

下の図を見ると、首に縛られたロープが削除され、図面もページ数を減らすために少なく割愛した。


原本(日本版)と盗作(ヘムン版)


原本(日本版)と盗作(ヘムン版)


ユジン版のもう一つの特徴は、トリックの状況描写を省略してしまったところがかなりある。

下の図を見ると、原本(=礼文堂版)では、被害者の状態と事件現場の描写をしておいたが、ユジン版(=ヘムン版)では、すべて省略して1ページにして入れた。 さらに、原本から一部の事件は完全に抜いてしまった。


礼文堂版 ユジン版


理由は、ページ数を減らすためにあったと考えられる。ユジン版(=ヘムン版)の本の構成を見ると、基礎編と応用編に分けているが、 その中で応用編に該当する部分が宰太郎の探偵ゲームを盗用した部分であり、基礎編は他の日本の児童推理クイズ本から盗用した部分だと考えられる。 そう考える根拠は基礎編と応用編の絵柄が完全に異なっているからである。(今後もまた取り上げるが、事実ある本で他のいくつかの著作物を持ってきて出版する海賊版の形態は全く新しいことでない。)


下の図は、インターネット上で一枚見つけたヘムン版探偵ゲームの一部の画像である。宰太郎の大人の絵柄とは違い、子どもの絵柄に近いことが分かる。問題の難易度も応用編に比べてかなり低い。

                             ヘムン出版社「探偵ゲーム」


このように子どもに売るために基礎編を挟んで入れたり、先に説明したように、後の応用編の問題は、削除したり文章を減らしたり、イラストを描き直したりしたと思われる。 順番を見てみよう。ユジン版では7つの「偽装工作」の問題数が4つの問題に減らされている。

礼文堂版 ユジン版

 


本当に驚くべきなのは1960年代に出た本を2015年現在までも各書店で無版権の海賊版バージョンが堂々と販売されていることである。 漫画ドラゴンボールの海賊版だった「ドラゴンの秘密」が表紙だけ変えてまだ売っている感じというか.. さらにドラゴンボールよりさらに古い本である。


宰太郎の原作の気になる方は、翻訳がちょっと障るが、礼文堂版が一番よく引き写しているので...参考にするように。中古で手に入りやすかったりする。 そしてもう一つ~

礼文堂版(=89年改正文庫版)では、68年版とは違って「探偵メモ」という14個のコラムがあり、その中の一つが途方もないのでひょっとして読むことになるならば注意して。.. 黄色い部屋の謎、オリエント急行殺人をはじめとする9作品の犯人ネタバレがコラムという名目の下に書かれている。 マニアではない、中途半端な推理小説ファン(本人のような...)であれば、核爆弾級ネタバレだから必ずチェックしよう。これについては言うことがまだあるが、この回の投稿はここまで。


               探偵メモ5 意外な犯人